日立金属は20日、北米市場における工具鋼の拡販強化を狙いに、米国で工具鋼流通・加工事業に進出すると発表した。新会社を設立し、米国の工具鋼流通・加工会社から資産を譲り受ける。新会社はオハイオ州シンシナティに本社を置き、工具鋼の切断・プレート加工販売やウェブ販売を行う。日立金属の北米における工具鋼の売上高は15年度20億円強。新会社を北米市場における橋頭保に位置づけ、18年度に40億円への拡大を目指す。
海外市場における工具鋼の拡販は重点施策の一つ。北米市場では工具鋼専門の流通子会社を持っておらず、拡販に向けて切断加工拠点、販売ネットワークの確保を急いでいた。資産譲渡額は約1200万米ドル(約15億円)。
15日にDiehl Steel Company(ディール社)との間で資産譲渡契約を締結した。米州地域統括会社のヒタチ・メタルズ・アメリカ(HMA)が新会社「Diehl Tool Steel」を設立し、11月初旬から新会社で業務を開始する。ディール社の経営陣が引き続き経営に当たる。
新会社はディール社が1926年の創業以来培ってきた流通サービス機能を軸に、自動車産業が集積する北米市場で工具鋼を拡販する。顧客基盤の拡大を加速するととともに、日立金属、HMAとのシナジー効果も追求する。
特殊鋼事業で新ブランド戦略/世界拡販の旗印に
日立金属は20日、特殊鋼事業のブランド戦略を再構築し、10月からグローバル成長に向けた拡販・発信を展開すると発表した。安来工場を中核とする特殊鋼事業では「YSSヤスキハガネ」ブランドを展開し、国内では高い知名度がある。一方、海外では国内ほどブランド浸透が進んでいなかった。新たに「YASUGI SPECIALTY STEEL」ブランドを立ち上げ、ヤスキハガネの価値観や先進性、顧客に提供する価値や可能性を明文化し、事業競争力の強化につなげる。
同社の特殊鋼事業は工具鋼、産機材、電子材が3本柱で、新たな柱として航空機・エネルギー材の成長戦略を展開。その中で欧米市場における工具鋼の拡販も重点施策に据えている。新たなブランドステートメントは、顧客に対して他社とは異なる価値を提供していくことを表明し、グローバル市場で認知度や信頼度を高めていく旗印に位置付ける。
平木明敏高級金属カンパニープレジデントは記者会見で、「北米では従来の日系ユーザーに加え、現地系にも工具鋼を拡販する。欧米だけでなく、知見のある優秀な人材のヘッドハントも継続し、世界で特殊鋼の販売強化を目指す」と述べた。
鉄鋼新聞 2015/10/21更新