①手打ち刃物販売会【11月8日(水)~14日(火)限定】
②包丁・鋏研ぎ直し【11月11日(土)、12日(日)限定】
正次郎鋏刃物工芸の当代・石塚洋一郎さんは、五代目の正次郎である。店名に「鋏(はさみ)」の一文字が入るが、遡ると初代は刀匠だ。明治の廃刀令に伴い造る刃物の姿は変わっていったわけだが、工房を訪れると「初代は刀鍛冶」という話に納得がいく。鋼を打つ力強い音が鳴り響き、真っ赤な火花が飛んで暗闇を照らす。日頃の物腰の柔らかな洋一郎さんから想像できない、男性的な力強い仕事に圧倒される。「総火造り」と呼ばれる伝統的な製法は、人が金属と火を操ることで刃物の形を成し、またその機能である切れ味を生み出す。例えば鋏の持ち手である「輪拵(わごしらえ)」。あの美しいカーブも、洋一郎さんは一塊の鉄を叩いて形作っていく。一切、型などは使用しない。実直な職人らしく、切れ味を左右する鋼をたっぷりと使って、一度手にした人が「もう他は使えない」というほどの刃物を生み出していく。「総火造り」で鋏を造るには、高度な職人技を要する。洋一郎さんはラシャ切り鋏の名人と言われた石塚長太郎を祖父に、その次男でやはり名人と言われた正次郎を父に持つ。そして名人の技は、息子である六代目正次郎、祥二朗氏に引き継がれる。工房には、親子二人の鋼を打つ音が力強く響いている。