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伝統刃物 技重ね新商品

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700有余年の刀鍛冶(かじ)の伝統を有する岐阜県関市には、その流れをくむ老舗の刃物企業が何社もある。
 1873(明治6)年創業の三星(みつぼし)刃物もその一つ。現社長の渡辺隆久さん(58)の曽祖父が刀鍛冶から生活用の刃物屋に転業したのが始まりという。第2次大戦後はいち早く海外に狙いを定め、良質のナイフなどを米国で販売。他社ブランドの受託生産専門で、刃物輸出の最大手に成長した。だが1985年のプラザ合意後の円高で経営環境は一変した。
 中国への工場移転を進める一方で打ち出したのが、初の自社ブランドの包丁開発だ。渡辺社長が「中級品では中国に歯が立たない。質の高い新製品を」と思案していた時、パン教室を開く妻に「使いやすい包丁が欲しいのに、なぜ自社製品がないの?」と言われた。本当の料理好きが欲しがる包丁を作ろうと決めた。
 モニター調査を重ね、使いやすい持ち手の形や重さに徹底的にこだわった。最近の包丁は切れ味を求めて刃を硬くするが、硬すぎない材を使って刃を研ぎやすくした。新聞紙や紙やすりでもできる研ぎ方の説明書も付け、長く使えると紹介。3年前に「和 NAGOMI」シリーズとして発売した。1万円前後の価格だが有名ホテルでも使われ、今は注文から3カ月待ちの人気だという。「関の技術を集約した、妻と私の合作」と渡辺社長は話す。
 関の刃物の代表企業といえば1908(明治41)年創業の貝印グループもそうだ。家庭用品など扱う商品は1万アイテムにのぼるが、よく知られるのはカミソリ。薄くて精巧な刃を作れる企業は限られる。貝印のカミソリ刃を担う「カイ インダストリーズ」社の関市の小屋名(おやな)工場では、月に7千万枚を生産する。
 だが近年は「多枚刃競争」など各社の競争は激しい。そこで比重を増しているのが医療用刃物だ。同工場では外科用メスなどを生産し、今では売り上げはカミソリ刃に次ぐ。多様な形状や機能が求められる医療用刃生産を支えるのは、カミソリで培った高度な刃先の加工技術だ。同社の山田克明常務(62)はそれを「野鍛冶の精神」と呼ぶ。「どんな人とも会い、使い手に合わせたものを作る」
 市の資料によると、関の刃物類の国内シェア(2014年出荷額)は包丁(47%)、ナイフ類(53%)、理髪用刃物(74%)などがいずれも第1位。蓄積された技術に裏打ちされた新たな発想が「刃物日本一の町」を支える。(吉住琢二)

2018.3.28 朝日新聞 DIGITAL

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