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漆掻き道具後世に “最後の弟子”に技術伝授

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漆を掻く道具作りの技術を伝える中畑文利さん(右)と弟子の鈴木康人さん=4月、田子町


全国一の漆の産地・岩手県二戸市などで伝統的に行われている漆掻(か)き。原木の表面を削る鎌、にじみ出る漆を集めるへらなど、専門性の高い道具は欠かせない。中でも樹皮に傷を付けるかんなは、その切れ味が漆の質や量に影響を及ぼすため、高い技術が必要とされる。全国で唯一、漆掻き道具を作る職人の中畑文利さん(75)=青森県田子町=は、父の代から守り抜いてきた技術を後世に残すため、“最後の弟子”とする鈴木康人さん(48)=福島県いわき市=に全てを伝えようとしている。
  4月下旬、町内の鍛治場には中畑さんと、鈴木さんの2人の姿があった。「ここはちょっと違うよね」「使う人のことを考えてあげてよ」。時々、厳しい表情で声を掛ける師匠と、じっと受け止め、その真意を探る弟子。作業場には、かんな製作への情熱がほとばしっていた。
  中畑さんが製作する漆掻き道具は、同じく鍛冶職人だった父長次郎さんとの絆でもある。旧浄法寺町(現二戸市)で鍛冶の修行をしていた長次郎さんは、師匠から漆掻き用のかんなの製作を課題として出された。当時は、新潟県の職人によって作られた道具が広く使われていたが、より使いやすいものを生み出そうと、長次郎さんは漆掻きについて研究。15年の歳月を費やして編み出したかんなは、中畑さんが作り上げる際の型紙となって今につながっている。
  高校卒業後に父の元に弟子入りした中畑さんは、その背中を見ながら技術を習得。35歳で家業を本格的に継いでからも、必死に漆掻きの道具と向き合い、二戸市だけでなく、全国各地で使われるまでになった。
  一方、後継者の育成は難航した。U字に曲がった刃の部分を使う漆掻きは、職人ごとに掻き方が異なるため、かんなは個人に合わせた微調整が求められる。これまでにも技術を引き継ごうと数人が中畑さんの元を尋ねてきたが、誰も高い技術を習得できなかった。危機感を持った日本うるし掻き技術保存会(二戸市)は、全国各地の鍛冶職人にかんなの製作を依頼。その中で引き受けたのが、鈴木さんだった。
  鈴木さんは、アパレル業界からの異例の転身で40歳で鍛冶職人となった。主に包丁研ぎを専門としていたことから、一度は依頼を断ったが、当時、骨髄性白血病に冒されていた中畑さんが、体調が優れないにもかかわらず、熱心に説明してくれたことに胸を打たれた。「中畑さんを喜ばせたい。中継ぎ役として伝統を守る手伝いをしよう」と覚悟を決めた。
  現在は仕事の都合で、年に2、3回しか直接指導を受けられないが、自宅でも腕を磨くため、中畑さんの動きを動画で撮影。自宅で作ったかんなを訪問する際に持っていき、少しずつ技術を高めている。
  鈴木さんは「かんな作りはとても繊細な作業。0・01ミリ単位の世界で勝負しなければならない」と技術の取得の難しさを強調。
  ただ、良い道具を作製し、職人から「これなら使える」「だいぶ上手になったな」と声を掛けられることがうれしいという。何より師匠の中畑さんから「自分の1番弟子だ」と言われるのが励みになる。
  中畑さんも体力が続く限り、技術を伝授していくつもりだ。「鈴木さんは職人にとって必要な向上心がある。独り立ちするのももうすぐだ」と期待を込める。

2018.6.27 デーリー東北新聞社

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