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「玉鋼」という言葉の由来 研ぎやTOGITOGI

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「玉鋼」という言葉の由来
http://hamonotogiya.blog75.fc2.com/blog-entry-443.html


たたら製鉄によってできる鉄の塊(/けら)中で、刃物の材料に適した炭素量が多い良質な鋼を「玉鋼」と呼ぶ。主に日本刀の材料として使われる鉄だ。
玉鋼という言葉の来歴について 「技法と作品 刀工編」 という本に具体的な記述があった。
ネットで検索してもこれを記録したものが見当たらなかったので、紹介しておく。
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 長谷川熊彦博士によれば、玉鋼の名称は明治末年から大正にかかる頃の命名であるという。すなわち島根県安来製鋼が陸軍工厰及び海軍工廠に坩堝製鋼の原料として納入した鋼で、小型のものが玉鋼、大きめの物が頃鋼であった。名付けたのは同社の工藤治人氏、小塚寿吉氏らで、いずれも商品名であり科学的な意味は無かった。
 古く日本刀の材料の産地で最も有名なのは石州出羽と播州千種で、それぞれ出羽鋼、千種鋼と呼ばれた。また、出羽鋼はできたを水中で冷却することから水鋼、千種鋼は自然に冷却したために火鋼とも言う。
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ついでに、同書に「包丁鉄」についても記述があったので紹介しておく。
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包丁鉄
銑に含まれる炭素量の低減を図り、鍛錬して鉄滓を除去した錬鉄を言う。市場には包丁の形に似た400~800グラムの延べ鉄として出されたため、包丁鉄の商品名で呼ばれた。
 左下場、本場とも現代の鍛錬場を大規模にしたものと考えてよく、火床も炉底も吹子もすべて大型を使用する。ここでは大がかりな銑卸しと鍛錬が行われるので、銑は炭素量1.5%以下の純良な鋼となる。
 包丁鉄は柔らかく処理が容易で、一般の鉄器や農具、建築金物などに広く用いられた。日本刀をはじめとする鋭利な刃物類には適さず、芯鉄や棟鉄の素材止まりであった。しかし今日では、これに若干吸炭させて皮鉄、刃鉄の一部として組み合わせることもある。
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なお、wikipediaの「玉鋼」の項目では次のように紹介されている。
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そのような中で海軍は明治15年(1882年)、東京築地の海軍兵器局内に建設された製鋼所における坩堝鋼の製造に際し、試験的にたたら製の錬鉄と鋼を使用したが、その約1キログラム (kg) 程度の小塊に砕かれた鋼が「玉鋼」の名称で呼ばれた
(中略)
なお、「玉鋼」の語源については諸説あり、坩堝製鋼された物が大砲の弾(玉)の製造に使用されたため、という説[10][25]が存在する一方、人間の拳大に割られた鋼を「玉」と呼称していたことから派生した、という説[26]もある。
wikiの記述にも出典の記載があるが、「技法と作品 刀工編」の方が具体的で信憑性が高いように思われる。

以下はとりとめない余談。
玉鋼は現在、主に日本刀の材料として使われている。身近な刃物に使われていることはほとんど無い。刀匠が作刀に使うためのものが日刀保たたらで毎年造られているが、一般向けには販売もされていない。刀匠が購入する金額も一般の刃物に使われる白紙や青紙といった高級刃物鋼の何十倍と大変高価である。そのせいか、なにやら神秘的な存在になってしまっていて、これを使うとすごい切れ味の刃物ができるというような迷信じみた噂がつきまとっている。越後三条の剃刀鍛冶で国際市場においてドイツ製カミソリに対抗する製品を作るため東京帝大で刀剣の秘伝書の研究と金属学の研究を行った実践の碩学岩崎航介は、玉鋼で優れた刃物ができると述べている。しかし大正時代から戦後にかけて活躍された方で、まだ鉄鋼材料の品質が拙劣だった時代の話で、長足の進歩を遂げた現代鋼の中に並べても同氏がそのように評価するかは疑問だ。現代の識者の中には幻想的なイメージがつきまとう玉鋼という言葉を嫌う人もいる。
たたら製鉄は現代の高炉を用いた製鉄法と比べて製造コストが非常に高価だ。燃料を多量に消費し、作業効率が悪いのである。主な理由のひとつは、たたら製鉄は一回の操業ごとに炉を壊して出来た鉄を取り出すためである。
たたら製鉄は直接製鉄法という、鉄を固体の状態で製造する製鉄法である。現代の高炉を用いた製鉄法は間接製鉄法といって、鉄を溶けた状態で製造する。
直接製鉄法は固形の鉄を作るので、できた鉄を取り出すために炉を壊さなければならない。このため次の操業のために新しく炉を作り直し、炉の温度を常温から鉄が溶ける1500度以上まで加熱しなければならず、作業効率も燃料効率も悪いのである。これに対して間接製鉄法では溶けた状態の鉄を作るので、炉を操業し続けながら完成した(精錬された/還元された)鉄を下部から流し出して取り出す連続操業ができ、製鉄コストが格段に安く済むのだ。ただし、溶けるほど高温になった鉄は炭素を多く吸収して、硬くてもろい銑鉄(せんてつ)になってしまうので、そのままでは鉄素材としてまったく使い物にならない。卸鉄法、錬鉄法、転炉などで脱炭する必要があるのだ。
日本刀の作刀でいまだに非効率なたたらで作られた高価な和鋼が使われているのは、美術品として鑑賞に堪える美しい鉄肌を作るためである。現代鋼は品質は優れているのだが伝統的な日本刀に見られるような妙味のある鉄肌を作ることはできないのだそうだ。そして現代の日本刀は日本刀剣の伝統的価値観にもとづく美術的価値が認められるものでなければ美術刀剣類として登録してもらえず所持できないことになっているので、法律の問題でたたらによる和鋼を使わざるを得ないとも言える。しかしこれは切れ味などの性能とは必ずしも関係が無い。
銃刀法は敗戦時にGHQが命じた武装解除の一環として作られた法律で、現代の社会情勢に照らすと不合理な面が多々ある。日本刀は現代の進化した製鋼技術を用いて武器としての性能を高めることが認められていない。しかし反面、伝統的な製法が法律によって強いられているおかげでたたら製鉄や伝統的な鍛刀法が伝承され続けているとも言える。
戦時中につくられていた軍刀は伝統的な製法によらないため美術刀剣類として登録が認められず蔵の奥から発見しても廃棄しなければならないものがあるが、この時代の軍刀は横にして上から錘を落とすといった耐久試験が行われていたので武器としての実用性では優れているとも言われる。現代の日本では日本刀の実用的な機能試験が組織的に行われることなど考えられない。
玉鋼という名前はさておくとして、研ぎ好きな者としては、折り返し鍛錬された鉄や錬鉄を研いだときに現れる不均質な鉄肌はとても面白く好ましい。鉄の作られた痕跡やその材料で製品を作った痕跡が刻まれているのである。
均質で折り返し鍛錬の必要が無い現代鋼を切削加工した刃物は研いでものっぺりとしていて無機質的だ。

研ぎやTOGITOGI
東京都練馬区氷川台4-52-11
代表研ぎ師 坂田浩志

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