パリでの国際食品見本市で包丁の研ぎ方を実演する味岡さん。「堺刃物を世界の刃物に」と意気込む(堺市堺区で)
◇伝統工芸士ら実演 高品質、シェフにPR
切れ味に定評があり、料理人が使う包丁の多くを占めると言われる堺刃物を取り扱う事業者らが、本格的なヨーロッパ進出を目指している。これまでは主にアメリカでPRしてきたが、パリで21日から開かれる世界最大級の国際食品見本市に6社が出展。世界から、よりすぐりの食材が集まる「食の都」で高い品質を披露し、ヨーロッパ市場に販路を広げる。(岡田健彦)
堺刃物は安土桃山時代にタバコの葉を刻む包丁から発展したとされ、鉄をたたいて作る。硬い刃金はがねと比較的軟らかい地金じがねを重ねた構造で、地金の研ぎやすさを生かした鋭利さが特徴だ。
堺刃物商工業協同組合連合会に加盟する事業者だけで約70社あり、食材の味を最大限引き出せるとして、国内の一流レストランのシェフらが愛用している。
見本市に打って出るのは、堺市産業振興センターが事務局を務める「堺食産品海外セールス実行委員会」。国内市場が飽和状態の中、海外に活路を見いだそうと2011年に設立され、昨年度まで米ニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコ、シンガポールでの見本市に出展を続け、堺刃物をPRして事業者の商談の場を提供。アメリカについては一定の成果が上がったとして、パリに照準を定めた。
この秋、出展するのは前回、15万人以上が来場したという見本市「SIALシアル Parisパリ2018」。堺刃物を扱う6社は25日まで製品を並べ、ヨーロッパ各地から集う商社や食品メーカー、ホテルの関係者らと商談を行う。
会場では、堺打刃物伝統工芸士の味岡知行さん(74)が包丁の研ぎ方を実演。フランス在住のシェフが料理作りを披露して、入場者に包丁の切れ味を確かめてもらう。期間中、パリのレストランなどでは現地のシェフに堺刃物についての講義や研ぎ方の研修も行う予定。
堺市産業振興センターの担当者は「まずは堺刃物の良さを知ってもらい、多くのフランス人に使ってもらいたい」と期待し、出展する「福井」社長の福井隆一郎さん(70)は「高い品質から、どこに出しても大丈夫という自負がある。今回の見本市を機に、堺刃物の魅力を世界中にアピールしていきたい」と話している。
2018.10.5 YOMIURI ONLINE
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