長崎新聞 2017.5.21
國松さん(左)から日本刀を受け取る森川さん=大村市上諏訪町
第2次世界大戦後、長崎に進駐した米軍将校が戦利品として持ち帰った日本刀が20日、元所有者の孫で、県立大村特別支援学校教頭の森川元(はじめ)さん(52)=大村市上諏訪町=に返還された。72年ぶりに帰ってきた家宝を見詰め、森川さんは「大切に飾りたい」と喜んだ。
森川さんらによると、刀は1574年製の備前長船(おさふね)(刃渡り71・8センチ)。祖父義郎さん(故人)が家宝として大切にしていた。戦後に米軍が没収し、将校だったウォルター・ハイヤーさんが1945年秋以降に米国へ持ち帰った。義郎さんは将来の返還に望みを託し、自分の名前や住所を書き込んだ木札を付けていた。
ハイヤーさん夫妻がホストファミリーとして受け入れた日本人学生が1987年、木札を読み、森川さんの父明さん(故人)に連絡。明さんはハイヤーさんに手紙を書いたが、返還は実現しなかった。
ハイヤーさんは2001年に死去し、ハイヤーさんの息子が刀を返還しようと奔走。日本兵の遺品返還運動をしている米国の団体「OBON SOCIETY(オボン・ソサエティー)」に仲介を依頼していた。
刀は「英霊にこたえる会中央本部」(東京)の國松善次副会長(79)=滋賀県栗東市=が持参し、森川さんに渡した。森川さんは「祖父と父が生きていたら喜んでいたと思う」と感慨深げ。國松さんは「刀を通して戦争の醜い部分と、平和を願う善意が見られた。人間らしさのドラマが完結した」と語った。