現代を代表する日本刀か 兵庫の刀工作品に国内最高位
自宅の鍛刀場で作品を制作する高見國一さん=佐用町家内
日本刀の審査会としては国内で最も歴史のある「現代刀職展(旧・新作名刀展)」(日本美術刀剣保存協会主催)でこのほど、兵庫県佐用町の高見國一さん(45)が手掛けた太刀が、県内からは史上初の最高位「高松宮記念賞」に選ばれた。長年の研究成果を下地にした巧みな技で生み出した一振りは、同協会が「後世から見た時、現代刀の代表作の一つになり得る」と絶賛。高見さんは「作品の幅を広げる好機と捉え、ますます精進したい」と情熱をたぎらせている。
高見さんは同町出身。現代の名工に選ばれている河内國平さん(76)=奈良県=の一番弟子として修業を積んだ。1999年に故郷で独立。60年前から続く新作名刀展に出品を続け、これまで特賞を7回受賞。特賞の中から最優秀作に贈られる高松宮記念賞は大きな目標だった。
受賞した太刀は全長79センチ。鎌倉時代中期の古刀を彷彿させる力強い姿に鍛えた。焼き入れにより生じる「刃文」は、乱刃と呼ばれる変化をつけながらも格調高く仕上げている。
さらに評価を高めたのが、刃文と鎬(刃と峰の間の厚みがある部分)の間に白く浮かぶ「映り」の出来栄え。師匠や弟弟子らとともに労力を費やした研究成果を基に、専門家をうならせる高い水準に完成させた。
同協会の石井彰調査課長は「濃淡までくっきりと現れた映りは、現代刀工の作の中ではずぬけており、失われた古刀の制作技術に近い」と評価する。特賞の受賞回数を伸ばし、協会の殿堂入りに当たる「無鑑査」の待遇も、手が届くところに迫る。
高見さんは「太古の刀鍛冶たちに近づきたい一心で、人が避ける失敗を繰り返し経験を積み上げてきた。技をひけらかすのではなく、見飽きない自然味を醸し出せたのは大きな収穫」と話していた。
作品は21日から東京都の刀剣博物館で展示される。(小林良多)神戸新聞NEXT 2018.7.13