あのジブリ映画にも関係?地名「たたら」の謎 全国に点在、由来調べてみた
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/434241/
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「山口県防府市にある多々良と福岡市東区の多々良、同じ地名だけど、つながりがあるの?」。防府市に住む男性から無料通信アプリLINE(ライン)を通じ、そんな疑問が特命取材班に寄せられた。調べてみると、大ヒットしたアニメ映画のワンシーンにも関連があった。
まず福岡市経済観光文化局に、多々良という地名の由来を聞いた。「分かりません。こちらに尋ねてみては…」と紹介されたのが、福岡市博物館(同市早良区)。問い合わせると、47都道府県のあらゆる地名を解説する「角川日本地名大辞典」(角川書店)を紹介してくれた。福岡市東区の多々良の項目には「鋳物を製する踏鞴(たたら)があったことに由来する」との記述がある。
防府市の多々良についても「昔、たたら製鉄所が当地にあった可能性が高いからと言われています」と防府市教委文化財課。どうやら、古代から近世にかけて発展した製鉄法「たたら製鉄」に関係がありそうだ。
たたら製鉄とは、木炭と砂鉄を燃やして鉄を取り出す製鉄法という。島根県奥出雲町に、唯一現存するたたら製鉄所がある。
宮崎駿監督の「もののけ姫」を連想する人がいるかもしれない。作品中、登場人物が呪いを解くためにたどり着いた場所は、たたら製鉄を営む村だった。製鉄所で女性たちが踏んでいたのは、風を送り込んで熱の温度を上げるための「ふいご」と呼ばれる装置。鞴(ふいご)を踏むと書いて踏鞴(たたら )と読むように、鉄作りにふいごは不可欠であった。「地団駄(じだんだ)を踏む」という言葉の由来とも言われている。
「たたら」という地名はほかにも、長崎県の多々良島(五島市)、徳島県の多々羅川(徳島市)、京都府の多々羅(京田辺市)、群馬県の多々良村(現在の館林市)、福島県の安達太良山(二本松市)、岩手県の鑪(たたら)山(盛岡市)などがあった。
各自治体に由来を聞くと「製鉄所の遺跡が発掘されている」「砂鉄が採れやすい地域だった」「山の噴火を、ふいごを踏んで火があがる様子に見立てた説がある」などと教えてくれた。やはり鉄作りや砂鉄の発掘が関係している可能性が高い。
明治後期以降、生産性の高い西洋式の需要が高まり、衰退していったたたら製鉄。それでも千年続いた伝統は、日本各地にその名を残している。
=2018/07/20付 西日本新聞朝刊=