福井新聞ONLINE 6月20日配信
福井県越前町に工房を構える刀匠、森國清廣さん(48)=本名・利文、福井市=が、最も権威があるとされる全国刀剣コンクール「新作名刀展」で最高賞の高松宮記念賞に輝いた。県内では初の受賞。森國さんは“日本一”の称号を喜びながらも「まだまだ道半ば。いつか国宝として認められるほどの名刀を造りたい」とさらなる精進を誓っている。
同コンクールは日本美術刀剣保存協会(東京)が主催。森國さんが受賞したのは「太刀・刀・脇指・薙刀(なぎなた)・槍(やり)の部」に出品した、長さ74センチの「直刃(すぐは)」と呼ばれる真っすぐの刃文の刀身。師匠の作品や鎌倉期の国宝に触発され、初めて制作に挑戦した。
直刃はシンプルなデザインだけに、刃文(はもん)の乱れや刀身表面の粗さが目立ちやすい。美しい刀身を造るには、材料の「玉鋼(たまはがね)」を鍛え整える作業「鉄づくり」が重要で、柔らかい鉄、硬い鉄をしっかり選別することから始めた。
品格ある見栄えや反りを追求し、締め切りぎりぎりまで調整。9カ月がかりで完成させた。審査では「刀身も刃文も完璧な出来」と評価された。
同部門には31点の応募があり、森國さんは受賞の喜びを「ひっくり返るぐらい驚いた」と表現。これまで二十数回出品し、努力賞受賞はあったが、特別賞の上位4賞にはならなかった。「刀が売れる時代ではなく、何度も廃業しようと思った」が、家族や師匠の支えがあり続けてこられたと振り返った。
刀匠を志したのは、幼少の頃に見たテレビ番組がきっかけ。暗闇の中で真っ赤な刀を打つ刀匠の姿が神秘的で印象に残った。福井農高卒業後、長野県の親方に弟子入りして10年修業。1995年に独立し、越前町に工房を構えた。
「やれるだけやってみようとここまで来ることができた。これからも目標は高く掲げ、今後は自分の個性を培っていきたい」と話している。
作品は7月24日まで刀剣博物館(東京・渋谷区)で展示。その後、全国を巡回する。
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福井新聞社
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