刃物の町として知られる岐阜県関市は26日、関の刀鍛冶の始祖とされる「元重(もとしげ)」の銘が刻まれた太刀が見つかったと発表した。鑑定などから、始祖の数代後の「元重」が作った可能性がある。
元重の銘は、刀の形状を紙に写し取った押形(おしがた)しか記録がなく、実物が確認されたのは初めて。市は太刀を購入し、9月3日から一般公開する。
市によると、元重は鎌倉時代に九州から美濃国に移り住んだとされるが、生没年は不詳。1450(宝徳2)年に編さんされた「美濃国鍛冶系図」の筆頭に元重の名前があり、関鍛冶の始祖とされる。
太刀は長さ68センチ。柄(つか)の中の茎(なかご)と呼ばれる部分に「元重作」と銘が刻まれている。今年6月、岐阜市であった愛刀家の集まりで静岡県の70代男性が持参。
男性は、刀匠らでつくる「関伝日本刀鍛錬技術保存会」の井戸誠嗣会長(74)に、関市に譲渡したいと相談したという。
男性は、刀匠らでつくる「関伝日本刀鍛錬技術保存会」の井戸誠嗣会長(74)に、関市に譲渡したいと相談したという。
井戸会長らが調べたところ、銘は押形と特徴が一致した。公益財団法人・日本美術刀剣保存協会(東京)の鑑定書には室町時代初期の作とされている。
始祖の元重とは時代が異なるが、井戸会長は「3~5代後の元重の可能性がある。それでも史料的価値は高い」と話す。
始祖の元重とは時代が異なるが、井戸会長は「3~5代後の元重の可能性がある。それでも史料的価値は高い」と話す。
関市は9月定例市議会に購入費300万円を盛り込んだ予算案を提出する。購入するまでは借り受け、関鍛冶伝承館(同市南春日町)で公開する。【立松勝】