桑名を拠点に活躍した刀鍛冶「村正(むらまさ)」の日本刀を一堂に集めた企画展が三重県桑名市京町の市博物館で開催され、全国各地から刀剣ファンが駆け付けている。最近人気のゲームやアニメの影響で刀剣に興味を持った女性ら若者の姿も絶えず、かつてない盛況ぶりだ。同館の学芸員は「(徳川家康が嫌ったとされる)『妖刀(ようとう)伝説』のある村正のネームバリューと刀剣ブームが要因」と分析しながら「予想をはるかに上回る人出で用意したチケットが足りない」と、うれしい悲鳴を上げている。【松本宣良】
展覧会は市内で所蔵される村正の日本刀4振りが県の文化財に指定されたのを機に企画した。室町から江戸初期にかけ、数代にわたって活動したといわれる村正の貴重な日本刀20振りなど、計43振りを陳列している。
特に宣伝に力を入れたわけではないが、10日から始まると、関東から九州まで各地の年配者や夫婦らが続々と来館し、連日にぎわっている。用意した約4000枚のチケットが10日間でほぼさばけたため、最終日の10月16日まで増刷して対応するという。杉本竜学芸員は「これまで売れたチケットの最高は2500枚ぐらいなので異次元の人出。インターネットなどで評判が広がったのでしょうか」と驚きを隠さない。
人気の理由の一つは村正の知名度の高さで、その名を一躍、有名にしたのが「妖刀伝説」だ。家康自身がけがをしたり、近親者が殺されたりした際に使われた刀が村正だったという逸話から「徳川家にたたる」と語り継がれた。真田幸村も大坂の陣で村正を使ったとの説がある。一方で、家康が村正を所持したことをうかがわせる記録も残り、伝説の真偽は定かでない。企画展では家康由来の刀も展示している。
若い女性が少なからず足を運んでいるのも特徴で、杉本学芸員は「人気のゲーム『刀剣乱舞』の影響が大でしょう」とみる。実在する刀剣の名前を持つ美男子キャラクターが登場し、乙女心をわしづかみにして刀剣ブームの火付け役になった。鳥羽市から来館した会社員、水谷友香さん(25)もゲームをきっかけに刀剣に魅了された一人で、「村正をはじめ、これほど多くの刀剣が並ぶ展覧会はなかなかない」と、食い入るように見つめていた。
入館料500円(中学生以下は無料)。10月2日午後1時半から、熱田神宮文化研究員、福井款彦(よしひこ)さんの解説がある。月曜休館(祝日の場合は翌日)。問い合わせは市博物館(0594・21・3171)。
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