白石昌幸 2015年3月3日15時01分 朝日新聞 DIGITAL
http://www.asahi.com/articles/ASH2T42NYH2TPPTB006.html
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■堺市堺区
ゴツゴツとした灰色の表面に、ざらりとした手触り。鉄の塊「●(●はかねへんに母、読みは『けら』)」で、重さは74キロ。昨年12月に、計300キロの砂鉄を12時間にわたって1300~1500度の高熱で熱し続けて作り上げた。炉から取り出した時は真っ赤に焼けた状態で、機械系3年の深尾司君(18)は「やっとできたという達成感があった」と話す。
世界に名の知られた「堺包丁」を素材からつくろうと、同校では2008年に砂鉄から鋼をつくる課題研究を開始。「たたら」と呼ばれる製鉄法を用い、今回が8回目だ。明治末まで約1千年続いたとされる技法は、木炭を燃やして炉の上から砂鉄の投入を繰り返す。火を止め、れんがで組んだ炉を壊すと底から●(かねへんに母、読みは「けら」)が現れる。これをたたいて鍛え上げた鋼はさびにくく、美しい光沢を放つ日本刀などに使われてきた。
最高品質の鋼を生み出せる「たたら」製鉄法だが、手間ひまかかるため大量生産には向いていない。課題研究に参加した3年生8人も放課後遅くまで居残り、燃料となる炭約600キロを炭塵(たんじん)まみれになりながら5センチ幅に切り、炉の築造などにも取り組んだ。そうした努力もあって、今回も●(●はかねへんに母、読みは「けら」)つくりに成功。指導にあたった笠井繁教諭(31)は「生徒たちは、先人のものづくりにかけた情熱を学べたと思う」と満足げだ。残り:2105文字/全文:2702文字