2018.1.18中日新聞
県工業技術研究所(関市)と金属加工業「丸富精工」(同)は、刃物の切れ味を調べる新たな試験機を開発し、十七日に県庁で試作機を公開した。従来のものより精度を上げ、作業も自動化。担い手不足が進む製造現場の作業軽減につなげる狙いだ。
切れ味試験は、四百枚の短冊状の紙束に機械で刃物を押し当て、一回の往復運動で切断できた枚数や長さを測る。これまでは、大正時代に発明された「本多式切れ味試験機」が主流だった。ただ、まっすぐに固定した紙束を切るため、紙の断面と刃物の側面の間に摩擦が生じ、測定に誤差があった。また、一回刃物を動かすたびに紙を手動で固定し直すため、千回近く繰り返す耐久試験では、膨大な手間がかかっていた。
開発した試験機は、紙束を曲げた状態で固定。切断された紙が刃物から自然に離れていくため、摩擦が生じない。紙束も自動で取り換えられ、切れ味の測定方法も、刃物が切り進んだ長さをセンサーで測る方式に変えた。正確な数値をリアルタイムでコンピューターに表示できる。
県によると、岐阜県は、家庭用刃物の国内出荷額が全国一位。一方、現場では人手不足が深刻で、正確かつ手間のかからない試験機を切望する声が多かった。現在は試作機の段階で、導入にかかる費用は、本多式の約五十万円に対し、百五十万~二百万円。今後、取り換えが容易な部品を使うなどして、コストカットに取り組む。
普及に向け、二〇一九年度までに試験手法などを確立させ、実用化を目指す。研究所の田中泰斗専門研究員(45)は「世界で戦う上では、品質維持が大切。その支援につなげたい」と意気込んでいる。
(兼村優希)