包丁の柄を削る小松和博さん。この道46年の職人としての勘が頼りだ=岐阜県関市の小松木工所で
◆くるくる 柄を支える手
蛍光灯の明かりだけが手元を照らす。
黒ずんだ機械の前に、小松和博さん(68)が座った。紙やすりが勢いよく回る。その上で、くるくる。回すのは包丁に付ける木製の柄。みるみる表面がつるつるになっていく。
岐阜県関市の小松木工所。柄を付け、削り、磨く。従業員は小松さんと妻、親戚の三人。「こんな仕事、おれらがおらんとできんのやないかなあ」
機械でプレスした刃と柄。合わせて作られたはずだが、ずれる。はみ出た金属を指して「これじゃ、手が危ないやら?」と、くるくる。頼りはこの道四十六年の、手の勘-。
その昔、関の刀は分業で作られた。刀匠が打ち、さや師、柄(つか)巻き師、研師…と回る。包丁もそう。市内の事業所の三分の一が刃物関連。多くが家内工業の職人だ。
小松さんは右手の親指と人さし指に、切り落とした軍手の指先をはめている。それでも、やすりに巻き込まれ、何度かつめがなくなった。
「恥ずかしくて飲みにも行けん」。節くれ立った手が、まちの看板を支える。